【為替】円安転換の鍵握る「強すぎる米経済」終了 | 吉田恒の為替デイリー | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア

構造的円安論では説明できない2023年以降の円安

米ドル/円は、2022年から150円を超えるまで大きく上昇した。この2022年に、日本の貿易・サービス収支の赤字は過去最高に拡大した(図表1参照)。この急激な円安拡大は、貿易・サービス赤字の急拡大が象徴する日本経済の衰退を受けた結果という「構造的円安」論が注目された。

【図表1】貿易・サービス収支と米ドル/円(2000年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成 しかし、貿易・サービス赤字は、2023年以降急縮小した。それを尻目に、米ドル高・円安は2023年以降も150円を超える動きが続き、2024年には一時161円を記録した。以上のように見ると、貿易・サービス赤字が縮小する中で米ドル高・円安が続いたことによる150円を大きく超える記録的な円安の主因は、貿易・サービス赤字拡大が象徴した日本経済の衰退化という「構造的円安」論で説明できない可能性が高いだろう。

投機円売り拡大を後押しした絶対的に大幅な金利差円劣位=2024年

2023年に、貿易・サービス赤字縮小の中での米ドル高・円安を説明できたのは、日米金利差(米ドル優位・円劣位)の拡大だった。そもそも日米金利差は、2022年から歴史的インフレの到来により急拡大したことを受けて、150円を超える歴史的円安を説明できるものとなった(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と日米金利差(2022年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成 以上のように見ると、2023年の時点で、1990年以来の150円を超える歴史的円安の主因は、歴史的インフレ到来による金利差の円劣位が急拡大したことだろう。ところが2024年に入り、日米金利差が縮小に向かう中でも、米ドル高・円安は拡大し、一時1986年以来の161円を記録した。

2024年に米ドル高・円安が一段と拡大した動きを正当化したのは、短期売買を行う投機筋の米ドル買い・円売り拡大だった(図表3参照)。問題は、なぜ日米金利差が縮小する中でも投機筋は米ドル買い・円売り拡大に動いたのかという点である。それは、金利差が縮小しても、絶対的には米ドル優位・円劣位が大きく、米ドル買い・円売りが有利な状況に変わりはなかったことが要因ではないだろうか。

【図表3】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

大幅な金利差円劣位を長期化させた「強すぎる米経済」が終わる

以上のように見ると、円安長期化の主因は絶対的かつ大幅な金利差円劣位が続いたことになるだろう。では、それをもたらした主因は何かと言えば、日本の金利上昇が緩やかだった一方で、2023年以降も米景気の回復が続いたことによりため、米金利の低下が限られた影響が最も大きな要因だろう(図表4参照)。

【図表4】日米の10年債利回り(2022年1月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成 そうした米景気回復は、トランプ政権でさらに続くのか、変わるのか。それこそが米ドル/円の行方を考える上での最も重要なテーマの1つだった。トランプ米大統領の政策、「米国第一主義」というアンチ国際協調は米景気をむしろ悪化させる懸念があるとの考えもあった。ところが、これまではそれに反する結果、予想以上の雇用増加や株高が続いた。

しかし、8月1日に発表された米雇用統計を受けて、雇用増加は「間違い」だった可能性が浮上してきた。本当にこれらが「間違い」であり、ついに「予想以上に強い米経済」の終了となるのか。それにより米金利が一段と低下することで、いよいよ大幅な金利差の円劣位で圧倒的に有利な円売りという状況が変わることになるか。それこそが米ドル/円の行方を考える上で、最も重要なテーマになるだろう。

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